映画の記録
告発のとき 2007
実話が元になっている物語である。二人のこどもが、兄弟どちらも軍に所属して亡くなるという親の物語だった。弟のほうはなぜ行方不明なのかと探しているうちに、ひどい殺人事件の被害者であることが分かる。遺体の息子に面会する両親の悲しみ。父親がその事件を追う。むすこの同僚から話を聞ける。軍を愛していた優秀な息子。イラク。そして核兵器について同僚の言葉があった。余談だが、アメリカでは怪しい人物の家に行くとき拳銃をもって防弾チョッキで数人で囲むのがまるで映画のようであった。言葉の節々に、戦争体験のある兵士の言葉が入ってくる、それは文字面でも十分だが、映像ではそれが、こころの傷から来るものだとより分かる。素直で優秀だった青年が戦争で変わってしまう。どの戦争でもそうだろうが、非常に多くの帰還兵がPTSDだという。ひとはこころも大怪我をする。
アメリカンギャングスター 2008
実話が元の物語である。いわゆる黒人の立場からマフィアを押しのけてアメリカンギャングスターにまで上り詰めたフランク・ルーカスというひとの物語である。追いかける刑事リッチー・ロバーツ(ラッセル・クロウが演じる)の正義への執念もすさまじい。
命懸けで行い続け、自分の家庭も崩壊してしまう。ついに逮捕して、フランクと取引をしてあらゆる汚職をも暴き出していく。そのため、なんと逮捕した刑事自身がフランクの弁護人にもなる。ひとはかれのような大胆なことをするひとを好きになってしまうとのこと。
チャーリー・ウィルソンズ・ウォー 2008
酒好きで女好きと議員チャーリー・ウィルソン(トム・ハンクス)と有閑マダムであるジョアンヌ・ヘリング(ジュリア・ロバーツ)が、ソ連を倒した英雄だった。
1979年に中央アジアにイスラム革命が広がるのを懸念したソ連がアフガニスタンに侵攻する(「アフガニスタン侵攻・紛争」または「ソ連・アフガン戦争」は1989年に終わる)。
アフガニスタンにおけるイスラム教ゲリラ「ムジャヒディーン」をウィルソンたちが支援して、ソ連を撤退させたのである。ソ連軍は15000人の戦死者を出す。
CIAの中でも異端だったガスト・エイヴラコトス(フィリップ・シーモア・ホフマン)というギリシャ移民二世が、塞翁が馬(さいおうがうま)の話をして良い感じのキャラクターを演じている。会話のなかでキリスト教、神、共産主義といった言葉が出てくるのを眺めていると日本でも似ている節はあると思った。
この戦争のためにソ連は91年に崩壊へ向かうことになるから、重要な転換期だったと言える。たほう、この戦争でアメリカが支援したムジャヒディーンたちはアメリカの武器を用いて覇権争いをはじめ最終的に政権をとったタリバンが9・11テロで3000人のアメリカ人を殺した。このときは極秘作戦であったからアフガンの人達はアメリカが支援したことを知らなかったのだろうか。
なお、ソ連の強かったのは大型武装ヘリ「ハインド」だったが、これをウィルソンらが支援した兵器である地対空誘導ミサイル「スティンガー」で打ち破った。スティンガーは一人で持ち運びできる点が戦局を変えたのである。
思うのは当然、2022年ウクライナでの「ジャベリン」だろう。いまウクライナをアメリカが支援していることをウクライナ中が知っている。それが2014年のユーロ・マイダン革命の頃からなのかどうかわたしは知らない。
が、オリバー・ストーンの『ウクライナ・オン・ファイアー』と『オリバー・ストーン・オン・プーチン』ならウクライナ・ロシアの件が始まったころに見た。この2作品を眺めていると、世界中において権謀術数が渦巻いていてわれわれ庶民に何が分かるのかという気がしてくるはしてくる。
君のためなら千回でも 2008
まだ平和だった1970年代アフガニスタン、そしてアフガニスタン侵攻後、それからタリバン政権下でのアフガニスタンという時間の流れのなかで起きる物語り。
ーーー
ネットフリックスで知った映画。
『アイリッシュマン』
ロバート・デ・ニーロ、マーティン・スコセッシ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ、彼らはイタリア系アメリカ人である。イタリア系移民たちはルーツを重んじるそうだ。
中でも、アル・パチーノの演じるジミー・ホッファにわたしは関心をもって見ていた。かれは最初、貧しい少年で労働者の側だったがいつの間にかその才能で労働者団体のトップに立つようになる。マフィアらが経営者たちよりもジミーについたぐらい。
巨大組織の権力者となったジミーはケネディ大統領の弟ロバートに叩かれるようになり、ジミー・ホッファ失踪事件と言えば迷宮入りとして有名だったそうだが、告発本が出た。それが『アイリッシュマン』というタイトルのようだ。
ケネディ暗殺にだれが関与していたのかなどの内容もあるが、ファンとしてはロバート・デ・ニーロとアル・パチーノが活動していること自体がうれしいことだ。映画素人のわたしはマーティン・スコセッシとジョー・ペシのすごさをこれで知る。
最初、アル・パチーノにだいぶ似ている若い俳優がいると思ったが、本人だった。最新技術で顔を若く見せたりでき、それぞれの年齢に合わせて3人は演技をわけて行ったと後のトークでスコセッシ監督と語っていた。トーク映像は、映画をネトフリで見終わったあとに自動再生された。
劇中でラッセル(ジョー・ペシ)を加えた3人に関する忠誠・友情・信頼といった物語それ自体もとても見入った。そこかしこに温もりや良心が感じられ、慈しみのクラシカルな感じがとても恰好よかった。彼らの映画は何本でも見ていたい。
参考文献にあげたスイッチのIMAIさんによると(この文章全体がIMAI氏のvol.01-04に依っている)、スコセッシの中心テーマは40年間ずっと「宗教と信仰心」なのだそう。R指定映画ばかり撮り続けてきた彼が、だ。いや、だからこそ、なのかもしれない。
死後の魂の行方などまさに当てはまる。スコセッシの映画にキリスト教信者から反対もあったようだが、ニューヨークのカソリック大司教も観に来て映画を絶賛したこともあるようだ。その大司教から『沈黙』という本を贈られたとのこと。
スコセッシ監督はひとの作品を観て、日本映画からの影響も強いということを語っている。IMAIさんによれば「溝口健二、小津安二郎、黒澤明ら」。スコセッシは古い映画の保存活動もしている。
また、「元祖ニューヨーク派のフィルム・メイカーであり、インディペンデント・フィルムの始祖」がカサヴェテスなのだそうで、「日常の景色を背景として、そこに生きる人間の心象を見せ、情景を描いたのがジョン・カサヴェテスだったが、マーティン・スコセッシはそのカサヴェテスのスピリットを見事に受け継いでいる」とのこと。
THE BACKGROUND OF “THE IRISHMAN” vol.04
ジミー・ホッファ、「大統領が恐れた男」IMAI EIICHI SWITCH ONLINE 2020.1.31
コメント
コメントを投稿